隣の老女

高円寺がどんなところか知らなかったので、
「どちらにお住まい?」と聞かれて、そのまま自分の住んでいる場所を答えた。
老女は、看護師にも、「高円寺に住んでるんですの。」と言った。
看護師さんは、「わぁ、素敵なところにお住まいなんですねぇ~。」と答えていて
正解の答えを教えてもらった。
この老女の夫は、このN大病院の医師だったようで、
ずいぶん前に癌を患い、自分が信じた治療でないと受けないと
外科治療をせぬまま、あっという間に亡くなったとそうだ。
「専門が免疫学だったんですけど。」
老女本人は大腸がん検診だかで泊まり込みで検査に来ているようだった。
「早期に発見すればいいですから。」と、
医者であった夫に何かにつけ、体調管理やその時々の薬を処方してもらい、頼りきっていたと話していた。
外科治療をせぬまま他界した夫の意思は受け入れたようだったが
自分は早期に発見して外科治療を受けると考えているようで定期的に検査に来ているという。
私はほとんど寝ていなかったので、夕食を終えて、早いけど寝ようとしたところ
話しかけられ、そのまま2時間ぐらい話し込まれ、3時に発作。
ある程度かわして無視すればよかったのだが、私も初めて入院して初日。
コロナ禍で面会謝絶。
たった一泊の入院と言われていたけれど、
人恋しかったのかもしれない。